こじらせ女子のつまらない出来事

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感想 はてな題詠「短歌の目」 3月のお題に参加してみて

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今月も参加しました、はてな題詠企画


はてな題詠「短歌の目」 第1回 3月のお題に参加します - こじらせ女子のつまらない出来事

 

締め切り当日の投稿になってしまいましたので、余韻も覚めやらぬまま、感想と解説を投稿します。

 

 

自作10首の解説と感想

1.雛
デート重ね三回目だからいけるかと 雛形どおりにいかないんだね

雛形=テンプレートとして。
当初、「恋の雛形」で作っていたのですが上手く詠めず。
私は、仕事では、あるテンプレートを用意して、その後個々に対応していけるようにカスタマイズするようなことをよくするのですが、型にはめて恋愛しようとしてもムダよ、という話。

告白されていたけれどもお返事を保留していた男性とクリスマスイブに食事をしたら、泊まろうと言われ、もちろんお断りしたら、「え、マジで??本当にだめなの?」と絶句されてしまった思い出を添えて。

 

2.苺
苺姫 偶像なのは分かってた CDの山にキスプリ流れ

先の記事に書きましたが、私が大好きだったアイドルが、グループ卒業直後にツイッターのプライベート・アカウントが流出、キスプリを含めて多数のデート写真がオタに見つかってしまった出来事を下敷きにしています(ついでに彼氏のアカウントも流出)。
一年ほどたった現在も、順調に交際されているそうです。
幸せなのが一番ですが、まあ握手券を買い支えていたファンには堪らない出来事ですよねぇ…。

 

3.夕
常夏と呼ばれた君は雨夜に流れ 夕べの花は朝露とともに

源氏物語に登場する「夕顔」という女性を下敷きにしています。

夕顔という女性は、そもそもは光源氏の親友、頭中将の愛人でした。「帚木」(ははきぎ)の巻にて、「雨夜の品定め」という有名なシーンにて「常夏の女」として話題に上るという形で登場します。

簡単に説明しますと、頭中将(両家のご子息で、モテ系チャラ男)は、親を亡くし頼りない風情の夕顔(貴族階級だが身分はかなり下)を気に入って、面倒をみるようになり子供(=撫子、のちの玉鬘)も作りました。「本妻にもしたいくらいの気持ち」などと適当なことを言ったりはしますが、もちろん身分が高く頭が上がらないくらい怖い正室がいるので、そんなことをするはずもありません。

夕顔が恨み言ひとつ言わないのを良いことに、普段はほったらかしにしておいては、たまに思い出して通う、というようなことを繰り返していました。

そんなある日、夕顔から歌が届きました。

『山(やま)がつの垣(かき)ほ荒(あ)るとも折々(をりをり)に あはれはかけよ撫子(なでしこ)の露(つゆ)』
 (意訳)(私はご立派なあなたに対してこんなみすぼらしい)山の家のような存在なので、(手入れされずに)垣根が荒れても(あなたに捨て置かれても)仕方がないけれど、たまには娘の撫子に、露ほどでもいいので憐れをかけてくださいな 

頭中将は、あまりにも蔑ろにしすぎたと思い、ご機嫌を取る歌を返します。

『咲(さ)きまじる色(いろ)はいづれと分(わ)かねども なほ常夏(とこなつ)にしくものぞなき』
 (意訳)色んな花(=女)が咲き誇っているけれど、それでも常夏のようなあなたに勝る人はいないよ

まさに、妻はいるけど、一番愛してるのはお前だよ、と愛人の機嫌を取る不倫男そのものですね!
恐らく常夏=床、しくものぞなき=敷物の掛詞なので、体の関係のある女としての夕顔は最高だよ、お前が一番イイオンナだよ!と返しています。
なお、夕顔は、娘のことを忘れないでね、とアピールしているのに、彼はあまり興味がない(夕顔とその娘との関係を真剣に捉えていない)ということが分かります。

さらに夕顔の返歌をご紹介しますと、

『うち払(はら)ふ袖(そで)も露(つゆ)けき常夏(とこなつ)に あらし吹(ふ)きそふ秋(あき)も来(き)にけり』
 (意訳)常夏と呼ばれる私の袖は、ぬぐっても涙に濡れています。嵐もやってきているし、もう秋(=飽き)になっているのね

ここの意味が頭中将には理解できません。夏なのに嵐って?と不審に思い、彼女の家をたずねていくと、すでにもぬけの殻でした。
後に、気位の高い正妻が彼女に熾烈な嫌がらせ(=嵐)を繰り返していたことが発覚します。

「頼る親もいないし、俺にも飽きられつつあるわが身を儚んで、夕顔は消えてしまったのかもしれないねー」

などと、遊びにも出られない雨の夜に、男達の無責任な噂話として、酒の肴にされてしまったかわいそうな夕顔。
高級貴族の彼らからしたら、そんな女は噂話で流してしまえるような、取るに足らない存在なわけです。


その後の顛末は有名な話なので省略しますが、「夕顔」の巻にて、たまたま乳母の見舞いに下町を訪れた光源氏が、通りがかった家の軒先に生えていた、あまり見たこともない庶民的な花(=夕顔の花)に心を引かれて一輪所望したことから、この家の女=夕顔と交際が始まります。

光源氏は都の有名人ですし、どこの馬の骨とも知れない女に通っていると知れては困るので、最初は仮面で顔を隠しては夕顔を抱くような関係(つまり体の関係があるのに身元すら明かさないでいる!!)でしたが、思いのほかに嵌りこんでしまいます。そして、人目に別荘に連れ込んで日がな一日セックスするような休暇を過ごすのですが、その夜、物の怪と思しき存在(光源氏の恋人で身分の高い六条御息所の生霊)が現れ、夕顔は苦しんで死んでしまうのでした。

このあたりの巻の歌には「露」という言葉が頻繁に出てきます。
男女の艶っぽい関係を示すとともに、一瞬で落ちて流れ去ってしまう儚さが現れていて、個人的にとても好きな歌が多いです。

後ろ盾を失った女の不安定さ、儚さと、当時の高級貴族たちの冷たいエリート意識やいやらしさが良く現れていますし、しかも、嫉妬に狂い夕顔を取り殺したのは誰一人ケチをつけられない貴婦人である六条御息所という、興味深い構図があります。

 

赤とんぼ 夕焼けを背に影を追う 窓の光とカレーの匂い

さて、打ち消し線をしたコチラの歌。
最初に詠んだのはこちらの歌でしたが、どうしても夕顔を題材にしたかったので線引きしてしまいました。思いがけなくスターもらえて嬉しかったな。

私の育った地域は、夕方5時に「赤とんぼ」が流れてしました。この曲が流れたら帰ろうね、と言われていたっけ。

みなさんの地域はどんな曲でしたか?

 

4.ひとり言
「ただいま」と警報機止めひとり言 今日も返事はアルソックから

私の家にはアルソック端末があるのですが、外出警備をかけて帰宅するとアラームが鳴るので、急いで止めなければなりません。

アルソック君は、警報を解除すると、
「おかえりなさい、おつかれさまでした」
と声を掛けてくれる優しい存在です。

下手したら、アルソックとしか会話してない日があるかもしれないよ?

そっと押すハートのスタンプ既読つかず ひとり言なのわかってるの

「7.線」の流れでLINEつながりで詠みましたが、いまいちなので打ち消し。

 

5.揺らぎ
会えぬ日々 活字でやりとり線つなぎ 君の揺らぎに僕も震えて

色々あって会うのはやめたけれど、LINEでやりとりをしていた人から、

「こんな文字だけのやりとりじゃダメだ!顔みて話さないとなにもわからない!」

と、不安を訴えられたのだけど、ではそもそも、会って話していたときには、お互い分かり合えていたの?という情景。

6.羊
一口で羊羹ぱくり目尻下げ 春の日差しと君の笑顔と

うぐいす豆の羊羹が好きです。
春らしくって、ちょっと甘くて。
縁側のイメージ。

 

7.線
「電波ない」鳴らないスマホ振ってみて ネット回線無関係よね

会社のそばの喫茶店によく行くんですが、いまどきとっても電波が悪いんですよ。繋がるところもあるんだけど、ふっと切れたりして。
ブラウザも読み込めなかったりするので、微妙につながる場所を求めてスマホを動かしたりして。
で、LINEしてたのに返事が来いから、きっと微妙に電波悪いせいで受信できてないんだって思うんだけど。外に出ても結局来てない。

どうして恋をしてるときって、待てないんでしょうね?

 

8.バク
「幸せ」とふと呟いて過ごす昼 迫る夜暗をバクが食べたの

バクってめちゃくちゃ良いテーマですよね。

・心臓バクバク←字あまり
・バク転/バク宙
バクー油田
・バクストン(地名)

とまあ、色々思いつきましたが、結局詠めそうになかったので、空想上の動物に。

私、つい一年ほど前まで、めちゃくちゃ悪夢を見ていて、よく夜中に悲鳴を上げて自分で起きたり、気づいたら号泣してたりしてたんですよ。
一緒に寝る人がみんなびっくりしたり、実家の頃は何事かと弟が様子見にきてくれたり。
幸せだと言い聞かせていても、過去からは逃れられないと思っていたのかもしれなくて、夜になると暗い部分が迫ってくると怯えていたような、そんな気分でした。

 

9.年度末
何一つ変わりはしない年度末 だって当社は9月決算

勤務先は9月決算ではありませんが(笑)
この場合、字余りにしないためには、2月、4月、5月、9月決算しか選択肢がなく、そう思うと9月が一番、響きが良いと思いませんか?

 

10.信号
信号は見えぬ振りして歩き去る 僕には帰る場所があるから

「なんで気づけなかったんだ、あの人は信号を出していたのに(SOSを発していたのに)」
みたいな発言て聞くじゃないですか。

彼女の心はとっくに黄信号で、赤信号になりそうなのに気づいているけど、帰らなければ仕方がないから、信号無視。
どこに、どうして帰らなければいけないんでしょうね?
そして、どうして寄り道するんでしょうね?

夕顔の歌にもちょっとだけ掛けて。

 

 おわりに

このはてな題詠企画、自分が詠むのも楽しいですが、ほかの参加者さんたちの投稿を詠むのがとーーーーっても楽しいです。

同じお題なのに、詠む方によって、全然違う情景があらわされているし、なんとなくですが、その方の心持ちや、姿勢まで滲み出ているような、そんな感じがします。

影響を受けてしまわないよう、自作を作り終えるまで読みに行くのをガマンしていましたが、やっと今日、わくわくしながら皆様のブログにスターをつけて回りました。

感想エントリ、振り返りエントリを読むのも楽しいです!

こちらからどうぞ↓


3月みなさまの感想をご紹介します - はてな題詠「短歌の目」

 

先月は投稿者全員に一首ずつ感想を述べていたり、お気に入りの歌で打線を組んだりされている方もいて、私もやってみたいなーと思うのですが、そこまでできるかなぁ…。

でも、なによりやっぱり、自分の作品に反応していただけるのってとっても幸せなことですよね。本当にありがとうございました。

 

それではまた、来月。